求人広告屋の掘った穴

記事には書けないことを、吐き出したい。

「体育会系も何人かはいてもいいかな。兵隊も必要なので。」と、その人事担当者は言った。

いわゆる体育会的性質とは、礼儀正しく、限界を作らず、忍耐強く、空気を乱さず、上には逆らわず、熱意を持って動く。日本のスポーツ界は、こういった資質を持つ人間を育てる仕組みとしてはすごくうまく機能していて、ある意味で日本社会に最も適した人材育成の役割をスポーツが担っていたのではないか。でも時代は変わりつつある。グローバル化により年齢や地位を恐れず、自分の考えを主張し、議論できるタイプの人間が必要とされるようになった。イノベーション(物事の新機軸)やクリエーティビティ(独創的なアイデア)が必要とされ、無理やり1つの型にはめ込もうとする教育に抵抗が強くなった。そして1人1人の権利が重要視されはじめた。そういう社会の流れにスポーツ界はついていけていない。

日本社会=体育会体質/爲末大学 nikkansports.com

以前、女子柔道の体罰問題が取りざたされた時に、
為末 大さんが、上記のようなことを話していて、強く共感した覚えがある。

『体育会系のヤツが欲しいね』
『やっぱ体育会系を採用したい』

この仕事をしていると体育会系の人材を
求める企業の声を聞くことが少なくない。

しかし、そもそも体育会系の人材とは、どんな人材なのだろうか
スポーツの部活経験がある人材=体育会系かというとなんか違う気がする。

体育会系として重宝される人材。それは一言で言えば、
『外部から設定された権力構造に、素直に従える人材』だと思う。

自分より上位とされた者を絶対とし、
やれた言われたことを、やれと言われた方法で黙々とできる人材のことだ。

この要素を持たなければ、どれだけ大きな声で挨拶ができても、
体育会系の人材とは認定されないと思う。

よくよく考えれば、たかだか同じ部活に入る時期が1年違っただけで、
なぜ、部活とは関係のない昼食の焼きそばパンを買いにいかせることができるのか、
なぜ、理不尽なことを強制できるのか、どう考えてもおかしい。

社会人でも、自分の部下や後輩を召使いのように扱ったり
自分の方が人間として上等であるかのように振る舞う人間がいるが、
全く体育会系の素養がない僕には、ちょっと人格に問題があるようにしか思えない。

業務上の指示する/指示される、教育する/教育されるという関係性を、
なんで、そこまで拡張できるのか。
仕事と会社という会社を取り除けば、赤の他人か顔見知りがいい所だ。

町中で赤の他人に、焼きそばパンを買ってこいと言ってみればいい。
それがどれだけ、非常識なことが分かるはずだ。

しかし、であればこそ、体育会系の人材は企業で重宝された。

まず、なによりマネジメントに手間がかからない。
やれと言われたことを、やる。
そこに納得させる必要やモチベーションを引き出す工夫はいらない。
しかも、少々のハードワークも苦にならない。
彼らは、そういうトレーニングを受けてきた。

既存のビジネスモデルをいかに正確に高速に回転させるか
ということが企業の事業拡大のポイントだった時代は、

言われたことをやり遂げる体育会系の人材は有用だった。
頭を使って考えるのは、企業のごく一部で良かった。

でも、時代は変わった。
それは多くの人が肌で感じていることじゃないだろうか。

とにかくあらゆる状況が高速で変わり続ける。
だから、昨日までの正解が、今日は間違いになっている。
社員一人ひとりがあらゆる局面で、考え、判断することが求められる。

これは「イノベーションを生み出そう!」みたいな大きな話ではなくて、
日々の仕事の中で、常に考えて、工夫しようみたいな話だ。

しかし、体育会系の人材の多くは、これができない。
彼らは、習慣的に上の指示を待つ。常に上の判断を仰ぐ。
自ら判断しない。自ら考えない。
突撃命令が出されるまで、兵士は直立不動で待っている。

そして最近、感じるのは多くの企業が、上記のようなこと、
つまり
「体育会系とは言われたことをやるだけで、
新しいことを考える能力がなくて、これからはあんまり必要ないっぽい」

ということに気づき始めている。

タイトルの台詞は、ある企業の人事担当者が、
新卒採用について語っていた時の言葉だ。

『体育会系ですか?うーん、まぁ、何人かはいてもいいかな。
兵隊も必要なので。でも、全員は困りますよ』

どういう人材が欲しいかという話をしていた時で、
営業が「体育会系とかどうですか」と質問した時の回答だ。

ちなみに、ある企業とは、中規模なパチンコチェーンだ。
体育会系ノリのイメージがある、パチンコ業界でも、もうこうだ。

言われた通りにしか店舗を回せない人間は、もういらない。
競合店とかマーケットとかお客さんのこととか、店舗の収益とかを考えて、
新しい集客方法や新しいサービス、効率的なアルバイト教育の方法などを、
考える人材が必要なのだ。

だから、体育会系ではなないからと就活に怯えている学生のみなさま、
もう、その心配は無用ですよ。

『普通の人で、いいんです』と、その経営者は言った。

僕は、肩すかしを食らった気分だった。

ベンチャー企業の経営者というのは、
中途採用に過大な期待を寄せる傾向がある。

誰よりも売れる営業でマネジメントスキルも高く、
これまでのコネとかノウハウで、新規事業を立ち上げ、
収益をガッポガッポ、あげてくれる。

それはオーバーにしても、その会社の社員平均よりも、
能力の高い人材を求める。

まぁ、少人数の会社だと、必然的に一人のパフォーマンスが
会社のパフォーマンスに直結しやすいので、当然と言えば当然なのかもしれない。

だから、この日も身構えていたのだが、そのベンチャー企業の経営者は違った。

『普通の人で、いいんです』
『マジメに仕事をしてくれれば、それでいい』

どれだけ採用ターゲットを聞いても、繰り返すばかり。
待遇も悪くないし、広告サイズも小さくない。

せっかくだから業界の経験者とか職種の経験者でも採用した方が、
ある程度、教育の手間が省けると思ったのだが、それもいらないという。
逆の意味で、途方にくれてしまった。

でも、よくよく聞いてみると、それがなぜか分かった。
ビジネスモデルが超強力なのである。

あまり詳しいことはかけないが、大手の隙間をつくような事業で、
ニッチな市場というよりも、その市場そのものをつくりあげてしまったようなビジネス。
すでに、かなり実績をつくっているので、たぶん、この会社以外は参入できない。

しかも、営業面に関してもマンパワーを投入することもなく、
ある程度、見込み案件があがってくるような仕組みが構築されている。

だから、社員はその仕組みを常識的な水準で回せばいいだけなのだ。
だから、「普通にマジメに仕事してくれる人でOK」という話になる。

いつも採用の相場から考えれば
過大な採用ターゲットを求められることに慣れていた僕は、
本当に目からウロコだった。

僕がブラック企業に対して、
こういう認識を持つようになったのも、
この時の印象が大きい。

ソフトな人柄で、穏やかに話す方だったが、
その時ほど、経営者をカッコいいと思ったことはなかった。

ブラック企業の原因は、無能か強欲な経営者。

この仕事は、割と多くの経営者と会う機会がある。
事業の優位性や、経営の展望に耳を傾ける。
※まぁ、当然、外向きの話しだと思うけど。

その経験の中で、つくづく実感することがある。それは、
企業がブラック化する最大の原因というのは、
経営者の能力が低いか、強欲かであるということだ。
※ここで言うブラック企業とは、いわゆる激務・薄給系に限る

事業が弱いから、現場の社員にしわ寄せがいく。
身の丈以上の利益を求めるから、現場の社員が無理をする。

ブラック企業の発生メカニズムとして、
外食産業のコスト面での過当競争が、よく指摘されるが、
どの業界も、ほぼ同じだと思う。

例えば、自分がいる業界もそうだ。
求人広告代理店なんていうのは、どこも一緒である。

今どき、どんな媒体も扱えるから、商品面での差別化はないし、
コストもケースバイケースで差はあるものの、基本は変わらない。

別で人材紹介とかWEB制作とかパンフレット制作とか
WEBマーケティングとか別の事業をやっていれば、
それを絡めた提案なんかもできるかもしれないけど、毎回、有効とも限らない。

競合する企業との差別化点なんてない、会社独自の付加価値なんてない、
そうすると、いきなり現場の社員の仕事で、
付加価値を生み出し、差別化しするしかなくなるのだ。

そして、その付加価値というのは、
「量」「スピード」という話しになりやすい。

なぜなら、質の付加価値というのは分かりづらいからだ。
営業の提案が優れているとはいっても、それはどこまで言っても仮説に過ぎない。
広告の制作物のクオリティなんて、
もっと主観的な判断基準になるから、好き嫌いの世界でしかない。

なので一部の天才をのぞいて、
凡人ができる差別化というのは、量とスピードだ。

例えば、夜中に頼まれた見積もりを次の朝には提出するとか、
デザイン案をいくつも提出するとか、
広告営業なのに、なぜか応募者対応を手伝うとか。

通常よりも短い納期で、通常よりも多い手間で。

でも、これはただの安売りにすぎない。
数字上の売上や利益は変わらなくても、
利益1円あたりの労働時間や工数は上がり続けている。

これは間接的に
自分の労働力を安く会社に売っているのと同じだ。

事業自体に商品やサービスに競争力がないから、
ビジネスモデルが平凡だから、現場の社員が無理をしなければいけない。
それは明らかに、経営者の能力の問題だ。

異常に低賃金の地方の工場の話なども耳にするが、
これも同じで、常識的なコスト構造では利益が出ないからそうなる。

グローバル化だ、なんだと経営者が御託を並べても、
社員のサービス残業で、人件費を浮かせているのは事実なのである。

コミュ力信仰を止めれば、中小企業でも優秀な人材を確保できるかも。

「やっぱりコミュニケーション能力かなぁ」
「コミュニケーション能力は必要」
「コミュニケーション能力がない子は、ダメだね」

こないだ、こんなことを書いたけど、
新卒採用の現場で、やはり「コミュニケーション能力」という言葉は、
ウンザリするほど耳にする。
大手から中小まで、規模も業界も職種を問わず、どんな企業の人事担当者も口にする。

その度に思うのだけど、「コミュニケーション能力は入社後、鍛える」
という発想はないのだろうか。

ビジネスマナーや専門的な知識や仕事のノウハウなどは、入社後、教えるけど、
コミュニケーション能力に関してだけは、一定の水準を入社前から求める。

いや、分かる。そもそも学生に仕事上の能力なんて期待できないんだから、
せめて普通に話せる人間がいいし、明るいキャラクターの方が先輩とかクライアントのウケもいい。
というのは分かる。

分かるんだけど、結局、失敗してないかと思うのだ。
特に新卒採用弱者である中小企業は。
もっと言うと、明るいだけの無能を採用する結果になっていないだろうか。

その他の能力:高 その他の能力:中 その他の能力:低
コミュ力:高 A B C
コミュ力:中 D E F
コミュ力:低 G H I

すごく、大雑把な表をつくってみた。
「その他の能力」というのは、最近、よく企業から言われるようになった
「地頭」でもいいし「学歴」でもいいし、
その企業で必要とされるコミュ力以外の能力と思ってもらえばいい。

で、どの企業も採用したいのは「Aグループ」だ。
ここは採用力の強い、超大手とか人気業界がこの上澄みを持っていき、
残りを大手企業が持っていく。

その後も、採用力に比例して「Bグループ」「Dグループ」「Eグループ」と、
上から決まっていく。
※もちろん、例外はたくさんある。でも全体の傾向としてはこんな感じだ。

そして採用力に欠ける中小企業は、大手、準大手、中堅などの残した
C、F、G、H、Iグループから選考を行うことになる。

ここで中小企業の担当者は、グループCやグループFの人材を採用する傾向が高い。
それはコミュニケーション能力を重視しているからだ。
※建築や機械など専門性を求める企業をのぞいて

でも、本当にそれで成功しているのだろうか。
例えば、入社後、数年しても企画の一つもまとめられなかったり、
報告・連絡・相談の質が悪くて、社内の業務や外部との連携が上手くいかなかったり、
という社員になってしまっていないだろうか。

そもそも面接という選考形式自体がコミュニケーション能力の中でも、
かなり口頭コミュニケーションと対人スキルという、限定した分野を問う手法だ。

前回、書いた「キャッチボール的コミュニケーション能力」よりも、
「テニスサークル的コミュニケーション能力」が前面に出やすく、そこだけで判断しがちだ。

だから、なんとなく明るいだけのキャラクターを採用してしまう。

そこで、僕が提案したいのは、コミュニケーション能力を重視する他の企業の、 逆張りをしてはどうかということだ。

コミュニケーション能力は、入社後、育てると割り切って、
それ以外の能力を重視し、「Gグループ」「Hグループ」を採用する。

そうすればポテンシャルの高い人材を採用できるし、
長い目で見れば、その方が会社のためになるのではないだろうか。

コミュニケーション能力に目をつむるだけで、採用の選択肢はグっと広がる。
コミュニケーション能力を鍛えられるノウハウを構築すれば、採用上の強みになる。

たぶん、多くの人が知っているように社会人を何年か続けていけば、
コミュニケーション能力なんて、ついていく。

だから人事担当者のみなさま、そろそろ無意味な
コミュニケーション能力信仰を止めませんか。

就活で求められるコミュニケーション能力は、大体この3種類。

企業が選考時に重視するのは「コミュ力」 9年連続1位 : J-CASTニュース http://www.j-cast.com/2012/07/31141228.html

なんかもう3周くらい、遅れているかもしれないけど。
この話題には首をツッコみたい。
何の話かっていうと、就職活動と言えば「コミュニケーション能力」だ。
毎年、毎年、企業が学生に求めるスキルで堂々のNo.1に輝き、
就活生をウンザリさせるあれだ。

もう散々言われているけど、これは「コミュニケーション能力」という
言葉の意味が広範すぎることに問題がある。
あと、それを分かってて、使うメディアとか企業とかだ。
もちろん企業と就活生の橋渡しをするとか言っといて、
この問題を見て見ぬ振りしている、僕たち求人広告の業者も悪い。

だから、少しでもこのコミュニケーション不全の解消に
貢献したいと思い、こうして長いエントリーを書いている。

これまで数十社の人事担当から新卒採用についてヒアリングしてきた
個人的な経験上、新卒採用で語られる「コミュニケーション能力」
というのは、すごく大雑把に以下の3つに分類されると思う。

  • テニスサークル的コミュニケーション能力
  • キャッチボール的コミュニケーション能力
  • せめて普通に話してくれよ的コミュニケーション能力

(1)テニスサークル的コミュニケーション能力

あんまり上手い言葉が、思いつかなかったのだけど、
なんとなくニュアンスは伝わると思う。ウェーイ的というか。
体育会系的でありテニスサークル的な、あれだ。
このコミュニケーション能力が、
いわゆる就職活動で必要なコミュニケーション能力として
一般的にイメージされているものだと思う。

その理由としては性格に起因する部分が大きいので、
就活生の間でも差が開きやすく、またその差が分かりやすかったり、
スクールカーストを決定する要素にもなったりするあたりな気がする。

コミュニケーションの中で、
情報が伝達されていることが重要なのではなくて、
コミュニケーションのやり取りのボリュームを担保して、
友好的な雰囲気づくりに貢献できるかどうか。
頭の良し悪しは関係ない。

だから、この(1)の能力だけが高い人の会話を、
よくよく聞いていると内容が驚くほどないことがある。
会話が噛み合ってないし、答えになってなかったりする。

ただ実は、この種のコミュニケーション能力が
高いレベルで必要とされる仕事というのは、かなり限られている。

販売職や個人客相手の営業、新規開拓型の法人営業、
ショッピングモールなどで老人とかおばちゃんに水とか健康器具とかを
売っている人、とかだろうか。

だから、(1)に関しては、上記のような職種を目指さないのであれば、
一般的な人付き合いができる素養があることを示せればいいと思う。

それは「ハキハキ話す」「ある程度、表情に感情を出す」
「それなりに大きな声で話す」「清潔なみなりを心がける」とかその程度だ。
服装なんて関係ないじゃんと思うかもしれないけど、
「なんか暗そう=コミュニケーション能力低そう」
という人事担当や面接官も大勢いる。

(2)キャッチボール的コミュニケーション能力

最も重要なのは、これだ。 「就職で必要なコミュ力って何か語るよ」のエントリーで
id:E8JGKLFfP氏が指摘しているのも、この(2)にあたると思う。

相手の要望と意図を正確に汲み取れる能力であり、
自分の要望と意図を相手に正確に伝えることができる能力のことである。

つまりちゃんと情報の伝達キャッチボールにおいて、
相手のボールをしっかりとキャッチし、
相手の胸元へバシっと返球できる能力のことである。

この(2)こそ、ほとんどの業界や職種で必要とされる、
コミュニケーション能力だと思う。

仕事というのは基本的にチーム(複数人)で行うからだ。

一人で仕事をしていたとしても、クライアントはいる。
社内外を問わず、自分の仕事の前と後ろには、かならず誰かがいる。
そしてそこには電話であれメールであれ、
依頼、報告、発注、指示、相談、連絡といった情報の伝達が発生する。
その情報の伝達によって、仕事というのは進んでいく。

それが上手くいかなければ、
仕事が上手く進まなかったり、後の工程に悪影響が出たりするのだ。

言い換えれば、指示(依頼/発注)する能力であり、指示される能力だ。
仕事がデキると言われる人は、ほぼ例外なくこの能力が高いし、
仕事がデキないと言われるヤツは、ここが弱いことが多い。

だから、どの企業も重視する。

そして面接というのは、

“当社への志望動機は?”などの特定の質問に回答するように指示され、
それに対する回答を正確に相手に伝える場であると言える。

ここでのやり取りが、噛み合わないと、 コミュニケーション能力が低いと判断される。

そうならないために、いくつかコツを伝えたい。

予め用意した近い回答を棒読みしない

「志望動機」「自己アピール」「将来の目標」など、
面接の想定問答集をつくるのは別に悪くないと思う。

でも、質問の意図が微妙に違うのに、
質問のジャンルが近そうというだけで、予め用意した答えを
強引に答えてしまうのは、やめたほうがいい。

例えば、求人広告代理店での面接だ。

面接官:もし当社でご活躍いただけるとして、どのように成長していきたいと考えていますか。

就活生:御社での仕事で経験を積んで、将来は、税理士になりたいと思います!

いや求人広告代理店で働いても、税理士にはなれない。
確かに大枠では、「将来の目標」とか「人生の目標」というジャンルの
質問かもしれないが、これでは問いと答えがまったく対応していない。

仮に本当に税理士になることが、人生の目標だったとしても、
まだ答え方があるのではないだろうか。

「以前より、税理士になりたいという目標があるので、
その勉強をしながら、御社での仕事を通して人材採用についての
ノウハウを学ぶことで、税務だけでなく人材や組織の面からも、
企業経営にアドバイスできる存在を目指していきたいと思っています。」

とかなんとか。

細部は少し変えているものの、このやり取りは実話だ。
ここまで分かりやすく、ちぐはぐな例は極端としても、
似たようなやりとりは、毎年、就職活動の場で繰り返されている。

実際に自分が面接をする側をやってみると分かるのだけど、
これをやられると結構、萎える。
「質問をちゃんと聞く気がないんだな」と思えるし、
それはつまり「コミュニケーションする気がないんだな」という印象になるのだ。

そりゃ実際は、緊張してなかなか言葉が出てこなくて、
なんとなく用意した答えを棒読みしてしまうという気持ちも分かる。

でも、やっぱりこれは止めた方がいい。
少しつまっても、その質問にちゃんと対応して、
そのために考えだされた言葉で答えた方が、よっぽど印象がいいと思う。

文脈を意識する

面接というのは単発のQ&Aが、ただ積み重ねられるものではない。
一つの質問に回答があり、その回答を受けて、また質問が行われたりする。

また直接、関連してなくても、それまでのやり取りを受け継ぎながら、
面接は進行する。

だから、そこで以前の受け答えと矛盾するようなことを
言ったりするのはNG。
同じ質問でも、それまでのやり取りが違うなら、
ニュアンスも微妙に変わる。

常にそれまでの文脈を意識しながら答えるだけで
しっかり受け応えている印象がでるはずだ。

根拠/理由を説明にする。

面接官:もし当社でご活躍いただけるとして、どのように成長していきたいと考えていますか。 就活生:HPを拝見して事業内容に魅力を感じました!

さすがに、こんなやり取りはないかもしれないけど、
質問に回答する場合は、その根拠や理由を、セットにして述べないと、
聞いている方は、判断のしようがない。

例えば、この例では、そもそも「どこに魅力を感じたのか」が分からないが、 「なぜそれを魅力に感じたのか」かも分からない。

だから、質問に答えるときは
「●●です。というのは、」「●●です。その理由は」
と、説明するのが良い。

その根拠/理由の部分が、
自分の個人的な体験などにつながっていると、
聞いている方は納得感がある。

質問の意図が分からない場合は、補足する。

決して、面接官や人事担当も、この(2)が高いとは限らない。
だから、意味が取りづらい、抽象的な質問をされることもあると思う。

そんな時は、「それってこういう意味ですか」と質問の意図を聞くことも大切。

「質問に正確に答えよう」という姿勢を伝えることができる。
あんまりやりすぎると嫌味かもしれない。

このあたりを気をつければ、(2)に関しては、
ある程度、大丈夫だと思う。こんな基本的なことと思うかもしれないが、
できていない就活生は多いことも事実なのだ。

余談だけど、たまに(1)だけが突出して高く(2)が全く身についてない人がいる。
20代前半はそれでいいかもしれないけど、
さすがに20代後半とか30代になってくると、端から見ていて結構、痛々しいものがある。

(3)せめて普通に話してくれよ的コミュニケーション能力

これはITとか製造業とか、技術系でかつ中堅以下位の企業に多い気がする。
こんな文章を見たことがないだろうか。

“技術力が強みの会社ですが、技術を使うのは人。
だから当社ではヒューマンスキルを重視しています”

プログラマーというと、ずっとPCに向かっている仕事と思われるかもしれませんが
多くの人と働く仕事。だからコミュニケーション能力が重要です。”

あるある。僕もお客様のオーダーで何回も書いたことがある。

でも、そういった企業の社員がコミュニケーション能力があるかというと、
わりかし、そんなことない。

入社1〜2年目の新入社員の取材などを行うことも少なくないのだけど、
「下を向いて小さな声で、ボソボソと話す」
「名刺を渡す手が、緊張でふるえている」
「質問の意図を理解してくれず、見当違いの話を延々とされる」
ということも日常茶飯事だ。

じゃ、なぜ「コミュニケーション能力」が大事とか言っちゃうかというと、 もっと、手強いのが面接に来るからである。

“聞き取れない位、小さい声で話す”
“目を合わせないどころか、ずっと下を向いている”
“質問にはセンテンスじゃなくて単語で答える”
“饒舌だけど、ネットスラングを多用する”

技術系を志望する学生さんっていうのは、 それ以外に比べて話が得意じゃなかったり内向的だったりするということは、
毎年のことなので、企業側も慣れている。

だから実は多くの人事担当者は、
少し位、たどたどしくても優しく待ってくれるし、
引き出す努力もしてくれる。それだけで判断したりもしない。
でも、さすがに会話として成立しないと面接として機能しないし、疲れる。

だから、予防線を引く意味で、
ナビサイトで「コミュニケーション能力」も重要とか言っちゃうのだ。

なので、心当たりがある人は、面接慣れして、
ある程度話せるようになれば、こういうケースでは
「コミュニケーション能力」だけで判断される心配はないと思う。

さいごに

なんだか長々と書きすぎてしまったが、最後に、僕が今、就職活動をしたり、
これからするよって言う人に伝えたいのは、
「コミュニケーション能力」なんて気にしすぎることないということだ。

コミュニケーション能力というのは、仕事をする上での大前提にすぎない。
どの業界・業種でも必要と言えば必要だから、
ああいう大雑把なアンケートでは、上位に来てしまうだけである。

企業ごとにコミュニケーション能力の方向性も違うし、強度も違う。
他の能力や資質みたいなものになれば、もう千差万別だ。
だから、気にしすぎたり、憂鬱になる必要なんてない。

大体、コミュニケーション能力なんて曖昧な言葉を使うヤツが、
一番、コミュニケーション能力ないんだから。

就活塾なんて、あやしくて当たり前。だって誰でもはじめられるもん。

こないだ、こんなニュースが話題になっていた。

就活塾、人気の裏でトラブルも 高額な入塾料や強引なクレジット契約など MONEYzine

同業界というわけではないけれど、ほとんどお隣さんのような業界なので、内幕を聞いたり目にしたりする機会も多いが、「やっぱりなぁ」というのがぶっちゃけた感想だ。

ニュースで取り上げられているような詐欺まがいの方法は論外としても、本当に素人が突然、始めました。みたいなケースが少なくない。なぜならこの「就活塾」というビジネスは、めちゃくちゃ参入しやすいのだ。まず、とにかく元手がかからない。講師としては、大学生に基本的なビジネスマナーを教えられる人間が最低一人いれればいいし(ほとんどの社会人が当てはまる)、教室はどこかで借りればいい。テキストは適当に就活本を切り貼りすれば、なんとなくできる。特別な資格も認可もいらない。とりあえずWebサイトでもつくって、就活塾を名乗れば始められる。お金をかけたくなければ、twitterやらfacebookなどを使ってソーシャルを使って集客をすればいい。講師役としては、そこそこ名の知れた企業の出身者がいればベスト。最悪、「一部上場上企業で人事を担当うんぬん」などとぼやかした表現を使えばいい。実績に関しても「昨年は大手企業、上場企業で内定多数!」など、尾ひれをつけまくって適当に盛る。あとは集客具合に応じて箱を大きくしたり、人を増やしたりすればいい。

しかも偏差値の変化などによって、ある程度、定量的に成果が見込める予備校など違って、就活塾というのは介在価値が見えづらい。もしかしたら、同じ企業から内定が出ていたかもしれないし、もっと希望に沿った企業に決まっていたかもしれない。そんなの誰にも分からない。いい企業に内定が決まったら、就活塾の手柄。ダメだったら、本人の努力不足とか運とか相性とか、景気動向の問題に転嫁できる余地がある。

もちろん、全ての就活塾がそんな所だとは言わない。でも簡単に参入できる流行のビジネスという程度のノリでやっている所があることも、また事実だと思う。確かに日本の就職活動というのは、特殊な世界で、(特に大手の)選考を突破するには、蓄積されたノウハウを活用した方が有利な面もある。また引っ込み思案なタイプなどは、ハキハキ話せるようになるだけで、かなり勝率も変わってくるはずだ。だから就活塾なんて、辞めてしまえとは言わないけれど、利用する時は慎重に選んで欲しい。

求人広告でウソをつく企業へダメージを与える、たった一つの冴えたやり方。

一度で、いいからこういうタイトルをつけてみたかった。もう、これで満足。求人広告の内容がウソだったと言うのは、よく聞く話である。「残業なし、とあったのに残業ばかりだった」「月給が高いと思っていたら、見込み残業代を含んでいた」「住宅手当なんてなかった」ひどいのになると「事務の仕事なのに、工場勤務だった」というのも聞いたことがある。なぜ、こういうウソの広告が世の中に出てしまうかというと、掲載企業が私たち業者(多くの場合は代理店)にも、虚偽の内容を伝えているからである。いや別に自分達をかばうわけではないのだけど、代理店サイドも掲載後のトラブル(後述する)は嫌なので、あまりにも露骨に事実と反する内容は掲載に二の足を踏むし、それなりにヒアリングを行うのである。それでも「住宅手当はある」と言い張られてしまえば、最終的にはこちらに確認の手段はない。かくして虚偽の内容が求人広告として掲載されてしまうのだ。と、ずいぶん前置きが長くなってしまった。もし、そんな求人広告のウソに面接などで気づいて、嫌な思いをして一矢報いたいなという時に、その企業にそこそこダメージを与えられる方法がある。それが

掲載媒体に報告する

というものだ。意外なほど知られていないのだけど、各求人サイトには掲載内容が事実と異なった場合に報告できるルートが用意されている。中途採用系の大手サイトだけを見てみても…

※Find Jobは見つけられなかった。

「いやいや、そんなのカタチだけ聞くだけでしょ」と思うかもしれないが、わりかしそうでもない。大体、どの求人サイトでも以下のようなフローをたどる。(※ウチは色々なメディアを扱っている代理店なので…)

  1. ユーザーから報告が求人サイトへ報告が入る
  2. 求人サイトを運営する媒体社から代理店の担当者へ確認が入る
  3. 代理店の担当者が掲載企業へ事実確認を行い、経緯書などを作成
  4. 媒体社からユーザーへ連絡
  5. 該当項目に関する表記の決めごとなど、その後の対応を決める

「やっぱり、その程度じゃないか」と思うかもしれないけど、あまりに悪質な内容だと、事実確認ができるまでは該当企業が掲載できないであるとか、問題になった項目に関しては正しい表記じゃないと掲載できないであるとかという対応も珍しくない。あまりに同時多発的に、クレームが入った場合はある種のブラックリストに入れられて、かなり出稿の内容を制限されたりということもある。実際にそういう例も知っている。まぁ、この辺の対応に関しては媒体の版元ごとに違う。大手の方が厳しいかなという印象だけど。だから、虚偽の内容を報告することは、ウソつき企業に手間やら制限を与えることができる有効な手段なのである。少なくとも、二度と同じウソをつくことを高い確率で防ぐことはできるはずだ。そして、さっき後述するとしたトラブルとはこのフローである。代理店の担当者にとっては、お客様である掲載企業に対して嘘を問いただすという神経を使う仕事の割には、1円にもならない。だから媒体を売る側は、それなりに慎重になるのである。(※もちろん、それだけではなく正しい情報を提供すべし、という職業的使命感もそこそこはある。)

ただ実感として、この制度を利用しているのは「担当者の息が臭かった、なんとかしてくれ」というような方が、まだまだ多いので、もっともっと正しい声が上がって欲しいと思う。そうすれば、こちらも「つまらん嘘は、やめましょう」という話がしやすくなるのです。