求人広告屋の掘った穴

記事には書けないことを、吐き出したい。

就活で求められるコミュニケーション能力は、大体この3種類。

企業が選考時に重視するのは「コミュ力」 9年連続1位 : J-CASTニュース http://www.j-cast.com/2012/07/31141228.html

なんかもう3周くらい、遅れているかもしれないけど。
この話題には首をツッコみたい。
何の話かっていうと、就職活動と言えば「コミュニケーション能力」だ。
毎年、毎年、企業が学生に求めるスキルで堂々のNo.1に輝き、
就活生をウンザリさせるあれだ。

もう散々言われているけど、これは「コミュニケーション能力」という
言葉の意味が広範すぎることに問題がある。
あと、それを分かってて、使うメディアとか企業とかだ。
もちろん企業と就活生の橋渡しをするとか言っといて、
この問題を見て見ぬ振りしている、僕たち求人広告の業者も悪い。

だから、少しでもこのコミュニケーション不全の解消に
貢献したいと思い、こうして長いエントリーを書いている。

これまで数十社の人事担当から新卒採用についてヒアリングしてきた
個人的な経験上、新卒採用で語られる「コミュニケーション能力」
というのは、すごく大雑把に以下の3つに分類されると思う。

  • テニスサークル的コミュニケーション能力
  • キャッチボール的コミュニケーション能力
  • せめて普通に話してくれよ的コミュニケーション能力

(1)テニスサークル的コミュニケーション能力

あんまり上手い言葉が、思いつかなかったのだけど、
なんとなくニュアンスは伝わると思う。ウェーイ的というか。
体育会系的でありテニスサークル的な、あれだ。
このコミュニケーション能力が、
いわゆる就職活動で必要なコミュニケーション能力として
一般的にイメージされているものだと思う。

その理由としては性格に起因する部分が大きいので、
就活生の間でも差が開きやすく、またその差が分かりやすかったり、
スクールカーストを決定する要素にもなったりするあたりな気がする。

コミュニケーションの中で、
情報が伝達されていることが重要なのではなくて、
コミュニケーションのやり取りのボリュームを担保して、
友好的な雰囲気づくりに貢献できるかどうか。
頭の良し悪しは関係ない。

だから、この(1)の能力だけが高い人の会話を、
よくよく聞いていると内容が驚くほどないことがある。
会話が噛み合ってないし、答えになってなかったりする。

ただ実は、この種のコミュニケーション能力が
高いレベルで必要とされる仕事というのは、かなり限られている。

販売職や個人客相手の営業、新規開拓型の法人営業、
ショッピングモールなどで老人とかおばちゃんに水とか健康器具とかを
売っている人、とかだろうか。

だから、(1)に関しては、上記のような職種を目指さないのであれば、
一般的な人付き合いができる素養があることを示せればいいと思う。

それは「ハキハキ話す」「ある程度、表情に感情を出す」
「それなりに大きな声で話す」「清潔なみなりを心がける」とかその程度だ。
服装なんて関係ないじゃんと思うかもしれないけど、
「なんか暗そう=コミュニケーション能力低そう」
という人事担当や面接官も大勢いる。

(2)キャッチボール的コミュニケーション能力

最も重要なのは、これだ。 「就職で必要なコミュ力って何か語るよ」のエントリーで
id:E8JGKLFfP氏が指摘しているのも、この(2)にあたると思う。

相手の要望と意図を正確に汲み取れる能力であり、
自分の要望と意図を相手に正確に伝えることができる能力のことである。

つまりちゃんと情報の伝達キャッチボールにおいて、
相手のボールをしっかりとキャッチし、
相手の胸元へバシっと返球できる能力のことである。

この(2)こそ、ほとんどの業界や職種で必要とされる、
コミュニケーション能力だと思う。

仕事というのは基本的にチーム(複数人)で行うからだ。

一人で仕事をしていたとしても、クライアントはいる。
社内外を問わず、自分の仕事の前と後ろには、かならず誰かがいる。
そしてそこには電話であれメールであれ、
依頼、報告、発注、指示、相談、連絡といった情報の伝達が発生する。
その情報の伝達によって、仕事というのは進んでいく。

それが上手くいかなければ、
仕事が上手く進まなかったり、後の工程に悪影響が出たりするのだ。

言い換えれば、指示(依頼/発注)する能力であり、指示される能力だ。
仕事がデキると言われる人は、ほぼ例外なくこの能力が高いし、
仕事がデキないと言われるヤツは、ここが弱いことが多い。

だから、どの企業も重視する。

そして面接というのは、

“当社への志望動機は?”などの特定の質問に回答するように指示され、
それに対する回答を正確に相手に伝える場であると言える。

ここでのやり取りが、噛み合わないと、 コミュニケーション能力が低いと判断される。

そうならないために、いくつかコツを伝えたい。

予め用意した近い回答を棒読みしない

「志望動機」「自己アピール」「将来の目標」など、
面接の想定問答集をつくるのは別に悪くないと思う。

でも、質問の意図が微妙に違うのに、
質問のジャンルが近そうというだけで、予め用意した答えを
強引に答えてしまうのは、やめたほうがいい。

例えば、求人広告代理店での面接だ。

面接官:もし当社でご活躍いただけるとして、どのように成長していきたいと考えていますか。

就活生:御社での仕事で経験を積んで、将来は、税理士になりたいと思います!

いや求人広告代理店で働いても、税理士にはなれない。
確かに大枠では、「将来の目標」とか「人生の目標」というジャンルの
質問かもしれないが、これでは問いと答えがまったく対応していない。

仮に本当に税理士になることが、人生の目標だったとしても、
まだ答え方があるのではないだろうか。

「以前より、税理士になりたいという目標があるので、
その勉強をしながら、御社での仕事を通して人材採用についての
ノウハウを学ぶことで、税務だけでなく人材や組織の面からも、
企業経営にアドバイスできる存在を目指していきたいと思っています。」

とかなんとか。

細部は少し変えているものの、このやり取りは実話だ。
ここまで分かりやすく、ちぐはぐな例は極端としても、
似たようなやりとりは、毎年、就職活動の場で繰り返されている。

実際に自分が面接をする側をやってみると分かるのだけど、
これをやられると結構、萎える。
「質問をちゃんと聞く気がないんだな」と思えるし、
それはつまり「コミュニケーションする気がないんだな」という印象になるのだ。

そりゃ実際は、緊張してなかなか言葉が出てこなくて、
なんとなく用意した答えを棒読みしてしまうという気持ちも分かる。

でも、やっぱりこれは止めた方がいい。
少しつまっても、その質問にちゃんと対応して、
そのために考えだされた言葉で答えた方が、よっぽど印象がいいと思う。

文脈を意識する

面接というのは単発のQ&Aが、ただ積み重ねられるものではない。
一つの質問に回答があり、その回答を受けて、また質問が行われたりする。

また直接、関連してなくても、それまでのやり取りを受け継ぎながら、
面接は進行する。

だから、そこで以前の受け答えと矛盾するようなことを
言ったりするのはNG。
同じ質問でも、それまでのやり取りが違うなら、
ニュアンスも微妙に変わる。

常にそれまでの文脈を意識しながら答えるだけで
しっかり受け応えている印象がでるはずだ。

根拠/理由を説明にする。

面接官:もし当社でご活躍いただけるとして、どのように成長していきたいと考えていますか。 就活生:HPを拝見して事業内容に魅力を感じました!

さすがに、こんなやり取りはないかもしれないけど、
質問に回答する場合は、その根拠や理由を、セットにして述べないと、
聞いている方は、判断のしようがない。

例えば、この例では、そもそも「どこに魅力を感じたのか」が分からないが、 「なぜそれを魅力に感じたのか」かも分からない。

だから、質問に答えるときは
「●●です。というのは、」「●●です。その理由は」
と、説明するのが良い。

その根拠/理由の部分が、
自分の個人的な体験などにつながっていると、
聞いている方は納得感がある。

質問の意図が分からない場合は、補足する。

決して、面接官や人事担当も、この(2)が高いとは限らない。
だから、意味が取りづらい、抽象的な質問をされることもあると思う。

そんな時は、「それってこういう意味ですか」と質問の意図を聞くことも大切。

「質問に正確に答えよう」という姿勢を伝えることができる。
あんまりやりすぎると嫌味かもしれない。

このあたりを気をつければ、(2)に関しては、
ある程度、大丈夫だと思う。こんな基本的なことと思うかもしれないが、
できていない就活生は多いことも事実なのだ。

余談だけど、たまに(1)だけが突出して高く(2)が全く身についてない人がいる。
20代前半はそれでいいかもしれないけど、
さすがに20代後半とか30代になってくると、端から見ていて結構、痛々しいものがある。

(3)せめて普通に話してくれよ的コミュニケーション能力

これはITとか製造業とか、技術系でかつ中堅以下位の企業に多い気がする。
こんな文章を見たことがないだろうか。

“技術力が強みの会社ですが、技術を使うのは人。
だから当社ではヒューマンスキルを重視しています”

プログラマーというと、ずっとPCに向かっている仕事と思われるかもしれませんが
多くの人と働く仕事。だからコミュニケーション能力が重要です。”

あるある。僕もお客様のオーダーで何回も書いたことがある。

でも、そういった企業の社員がコミュニケーション能力があるかというと、
わりかし、そんなことない。

入社1〜2年目の新入社員の取材などを行うことも少なくないのだけど、
「下を向いて小さな声で、ボソボソと話す」
「名刺を渡す手が、緊張でふるえている」
「質問の意図を理解してくれず、見当違いの話を延々とされる」
ということも日常茶飯事だ。

じゃ、なぜ「コミュニケーション能力」が大事とか言っちゃうかというと、 もっと、手強いのが面接に来るからである。

“聞き取れない位、小さい声で話す”
“目を合わせないどころか、ずっと下を向いている”
“質問にはセンテンスじゃなくて単語で答える”
“饒舌だけど、ネットスラングを多用する”

技術系を志望する学生さんっていうのは、 それ以外に比べて話が得意じゃなかったり内向的だったりするということは、
毎年のことなので、企業側も慣れている。

だから実は多くの人事担当者は、
少し位、たどたどしくても優しく待ってくれるし、
引き出す努力もしてくれる。それだけで判断したりもしない。
でも、さすがに会話として成立しないと面接として機能しないし、疲れる。

だから、予防線を引く意味で、
ナビサイトで「コミュニケーション能力」も重要とか言っちゃうのだ。

なので、心当たりがある人は、面接慣れして、
ある程度話せるようになれば、こういうケースでは
「コミュニケーション能力」だけで判断される心配はないと思う。

さいごに

なんだか長々と書きすぎてしまったが、最後に、僕が今、就職活動をしたり、
これからするよって言う人に伝えたいのは、
「コミュニケーション能力」なんて気にしすぎることないということだ。

コミュニケーション能力というのは、仕事をする上での大前提にすぎない。
どの業界・業種でも必要と言えば必要だから、
ああいう大雑把なアンケートでは、上位に来てしまうだけである。

企業ごとにコミュニケーション能力の方向性も違うし、強度も違う。
他の能力や資質みたいなものになれば、もう千差万別だ。
だから、気にしすぎたり、憂鬱になる必要なんてない。

大体、コミュニケーション能力なんて曖昧な言葉を使うヤツが、
一番、コミュニケーション能力ないんだから。