求人広告屋の掘った穴

記事には書けないことを、吐き出したい。

「体育会系も何人かはいてもいいかな。兵隊も必要なので。」と、その人事担当者は言った。

いわゆる体育会的性質とは、礼儀正しく、限界を作らず、忍耐強く、空気を乱さず、上には逆らわず、熱意を持って動く。日本のスポーツ界は、こういった資質を持つ人間を育てる仕組みとしてはすごくうまく機能していて、ある意味で日本社会に最も適した人材育成の役割をスポーツが担っていたのではないか。でも時代は変わりつつある。グローバル化により年齢や地位を恐れず、自分の考えを主張し、議論できるタイプの人間が必要とされるようになった。イノベーション(物事の新機軸)やクリエーティビティ(独創的なアイデア)が必要とされ、無理やり1つの型にはめ込もうとする教育に抵抗が強くなった。そして1人1人の権利が重要視されはじめた。そういう社会の流れにスポーツ界はついていけていない。

日本社会=体育会体質/爲末大学 nikkansports.com

以前、女子柔道の体罰問題が取りざたされた時に、
為末 大さんが、上記のようなことを話していて、強く共感した覚えがある。

『体育会系のヤツが欲しいね』
『やっぱ体育会系を採用したい』

この仕事をしていると体育会系の人材を
求める企業の声を聞くことが少なくない。

しかし、そもそも体育会系の人材とは、どんな人材なのだろうか
スポーツの部活経験がある人材=体育会系かというとなんか違う気がする。

体育会系として重宝される人材。それは一言で言えば、
『外部から設定された権力構造に、素直に従える人材』だと思う。

自分より上位とされた者を絶対とし、
やれた言われたことを、やれと言われた方法で黙々とできる人材のことだ。

この要素を持たなければ、どれだけ大きな声で挨拶ができても、
体育会系の人材とは認定されないと思う。

よくよく考えれば、たかだか同じ部活に入る時期が1年違っただけで、
なぜ、部活とは関係のない昼食の焼きそばパンを買いにいかせることができるのか、
なぜ、理不尽なことを強制できるのか、どう考えてもおかしい。

社会人でも、自分の部下や後輩を召使いのように扱ったり
自分の方が人間として上等であるかのように振る舞う人間がいるが、
全く体育会系の素養がない僕には、ちょっと人格に問題があるようにしか思えない。

業務上の指示する/指示される、教育する/教育されるという関係性を、
なんで、そこまで拡張できるのか。
仕事と会社という会社を取り除けば、赤の他人か顔見知りがいい所だ。

町中で赤の他人に、焼きそばパンを買ってこいと言ってみればいい。
それがどれだけ、非常識なことが分かるはずだ。

しかし、であればこそ、体育会系の人材は企業で重宝された。

まず、なによりマネジメントに手間がかからない。
やれと言われたことを、やる。
そこに納得させる必要やモチベーションを引き出す工夫はいらない。
しかも、少々のハードワークも苦にならない。
彼らは、そういうトレーニングを受けてきた。

既存のビジネスモデルをいかに正確に高速に回転させるか
ということが企業の事業拡大のポイントだった時代は、

言われたことをやり遂げる体育会系の人材は有用だった。
頭を使って考えるのは、企業のごく一部で良かった。

でも、時代は変わった。
それは多くの人が肌で感じていることじゃないだろうか。

とにかくあらゆる状況が高速で変わり続ける。
だから、昨日までの正解が、今日は間違いになっている。
社員一人ひとりがあらゆる局面で、考え、判断することが求められる。

これは「イノベーションを生み出そう!」みたいな大きな話ではなくて、
日々の仕事の中で、常に考えて、工夫しようみたいな話だ。

しかし、体育会系の人材の多くは、これができない。
彼らは、習慣的に上の指示を待つ。常に上の判断を仰ぐ。
自ら判断しない。自ら考えない。
突撃命令が出されるまで、兵士は直立不動で待っている。

そして最近、感じるのは多くの企業が、上記のようなこと、
つまり
「体育会系とは言われたことをやるだけで、
新しいことを考える能力がなくて、これからはあんまり必要ないっぽい」

ということに気づき始めている。

タイトルの台詞は、ある企業の人事担当者が、
新卒採用について語っていた時の言葉だ。

『体育会系ですか?うーん、まぁ、何人かはいてもいいかな。
兵隊も必要なので。でも、全員は困りますよ』

どういう人材が欲しいかという話をしていた時で、
営業が「体育会系とかどうですか」と質問した時の回答だ。

ちなみに、ある企業とは、中規模なパチンコチェーンだ。
体育会系ノリのイメージがある、パチンコ業界でも、もうこうだ。

言われた通りにしか店舗を回せない人間は、もういらない。
競合店とかマーケットとかお客さんのこととか、店舗の収益とかを考えて、
新しい集客方法や新しいサービス、効率的なアルバイト教育の方法などを、
考える人材が必要なのだ。

だから、体育会系ではなないからと就活に怯えている学生のみなさま、
もう、その心配は無用ですよ。