求人広告屋の掘った穴

記事には書けないことを、吐き出したい。

僕が、ある種のブラック企業をイマイチ断罪できない理由。

居室が狭く危険な「脱法ハウス」に関し、女性限定物件が増えている。業者側は「男性がいる物件よりトラブルが少ない」とアピールし、厳しい雇用環境を背景に女性がターゲットになっているとみられる。そうした物件に3月まで1年暮らした女性(33)が取材に応じた。部屋は2畳で、ネズミが走り回る劣悪な環境。それでも「脱法ハウスは生きるために必要でした」と言う。他に受け皿はないのか。
脱法ハウス:増える女性専用…元住人「低収入、親頼れず」 毎日新聞

こんな記事が話題になっていた。
なんか似たような構図が身近にあるなと思ったら、
ある種のブラック企業の内情を知る度になんとなく思っていることだった。

ブラック企業というと、ちょっと射程が長過ぎる。
ここでいうある種のブラック企業とは「体育会系パワハラ営業会社」のことである。
具体的に言えば、投資用不動産の営業とか企業の通信やOA機器の営業とかが多い。
まぁ、こういう企業は一般的な感覚から言えばブラック企業だと思う。
朝から晩まで、電話機にしばりつけて何百件と電話をかけさせ、
成績が悪ければ罵倒し人格を否定し水をぶっかける。
僕ら求人広告の業者が来てるのに、その目の前で怒鳴りつける。

ただ、その一方で採用においては学歴や職歴なんてほとんど気にしない。
まぁ、それは社員がドンドン辞めて、常に採用を行わなければいけなくて、
ついでにそんな実情もバレているので応募数も少ないからではあるけど。
高卒だろうが中卒だろうが、フリーターだろうか、派遣社員だろうか、
就活失敗したニート
だろうが、
「ある一定のボリュームで日本語を話せる」という程度の基準で、
とりあえず採用して、働かせて、成果がでなかったら辞めるだろという具合だ。

しかも成果さえ出せば、ドカンとインセンティブなどで金銭的には報いてくれるし、
ポジションもくれて罵倒する側にしてくれる。そういう意味では、すごく公平な人達だ。
下手をすれば、そこそこいい大学を卒業して、そこそこ大きめの会社に入ってという
同年代の人よりも高い年収などを得ることも可能だ。

いや、そこまでの成功をおさめなくても、
例えば、全く職歴がなかった人が、そこで最低限の成果をあげながら
2〜3年つとめることができたのなら、それは一つの職歴になる。
少なくとも転職先の選択肢は、その前に比べてグっと広がっているはずだ。

だから僕は、この手の企業を「ブラック企業が!」と断罪することがいまいちできない。
新卒一括採用という日本の雇用慣習から足を踏み外した人達にとって、
この人達がセーフティネットになっているというのはある側面からでは事実だからだ。
しかも実際に取材して、そんな人達の話を聞いているからなおさらだ。

もちろん、そういう人達の弱みにつけこんでいるという批判も的を得ていると思うし、
そこで成功した人達の足下には屍の山が築かれていることも分かっている。

でも、じゃあ、どうすればいいのかというと、やっぱり答えはない。
ということで冒頭の記事の話しとなんとなく似ているなぁと思ったわけです。