求人広告屋の掘った穴

記事には書けないことを、吐き出したい。

ベンチャー企業より大手を選んだ方が、いい理由。

以前、ある日本を代表するような大手企業(メーカー)の中途採用を担当したことがある。
そこで担当者の方と人材要件について話していた。
担当者の希望はどうも同業界の大手企業の経験者という感じだったので、
それじゃ、あんまり狭すぎると思って、
中小とかベンチャーの方ってどうですかと質問をした所、

「中小企業やベンチャーにも優秀な方はいらっしゃると思います。
でも、なんか違うんですよね。たぶん、難しいと思います。」

という何とも非合理な答えが返ってきたことがある。

「ベンチャー企業か大手企業か」というのは、
ここ数年、新卒界隈でよく耳にするようになったテーマである。
なぜ、その2項を対立させなきゃいけないのかとか、
そもそもなぜその2択なのかというのはよく分からない。
まぁこれまでは大手企業を目指すことが当たり前とされてきていたけれど、
実は若手にチャンスが与えられるベンチャー企業の方がいいかもといった
価値観の変遷が背景にあるのかもしれない。
なので、この問いそのものがさして本質的ではないと思いながらも、
僕が答えるのであれば現状の就職活動においては、
以前も書いた通り大手企業を目指す方がいいと思う。それは

大手からベンチャーに渡るのはカンタンです。しかし、その逆は限りなく不可能に近い。 ベンチャー企業の人事担当者だけど

ということに、ほとんど集約される。
そして、その理由のかなりの部分は冒頭に紹介したエピソードに象徴されているような気がする。
もちろん例外はあると思うけど、日本の大手企業、特に歴史も古いような大手企業というのは
中途入社でも同じぐらいの「格」を持った大手企業出身者しか取りたがらない。
まぁ旧家の結婚みたいなものです。
仮に人事担当レベルでは、「ベンチャー出身だけど、この人優秀だなぁ」と思っても
採用には踏み切らない、なぜならそんな採用をしたら、人事担当の人事考課がマイナスになるからだ。
だからベンチャーから大手にいくのは、かなり難しい。

そして逆に大手出身者がベンチャーにいくのは超簡単。というか引く手数多だと思う。
その背景にあるのは、これまで日本の就職活動というのは
まず大手を目指す事がセオリーであったから大手には優秀な学生が集まりやすく
大手出身者には優秀な人材が多い蓋然性が高いという、根拠を持った理由だけではなくて、
大手出身というブランドの強さがそこにはある。
たぶん大手出身者というだけで、実力の50%増しで判断される。
大体、大手で2〜3年程度のキャリアというのは、
長い研修も終わって初めての部署に配属されて基本的な業務を任されたくらいなので、
そもそもたいした実績なんてないはずだ。
それでも大手出身の若手というのは、転職市場で人気を集める。

日本の人材マーケットでは、大手企業に新卒で入社できたということ
そのものが強力なブランドであり、無敵のカードになる。

そうなると後々の転職においても、ある程度、選べる立場になるのだ。
人材紹介会社にも高額で売れるし、決まりやすいから歓迎されやすい。
つまりキャリアの可能性を最大化させるためにも
新卒においては大手を目指すことが最適な戦略になるのだ。残念ながら。

とはいえ、どうしてもやりたい仕事とか入りたい会社があるなら、
そこを目指せばいいと思う。
そんな人は、そもそも「ベンチャー企業か大手企業か」というような問いをたてないと思うし。